精巣腫瘍について知っておこう!
先日当院で精巣腫瘍の摘出手術を行いました。
精巣とは『タマタマ』や『金玉』と呼ばれている臓器のことです。
これを機に精巣腫瘍について知っていただければと思います。
精巣腫瘍は去勢をしていない高齢犬で発症する病気です。猫でも発症するようですが、河村は見たことがありません。
好発年齢は10歳前後で、加齢とともに発症リスクが上昇します。
好発犬種はシェットランド・シープドック、コリー、ボクサー、ジャーマン・シェパード、マルチーズとの報告がありますが、これらの犬種は絶対数が多くないので、日本での流通数が多い犬種で出会うことの方が多いと感じています。
潜在精巣と呼ばれる精巣が成長過程で正しい場所(陰嚢内)まで移動できていない場合(腹腔内陰睾や皮下陰睾)は発症率が9.2倍に跳ね上がります。
主な症状は次のとおりです。
・片側の精巣が大きくなる
・腫瘍からエストロゲン(女性ホルモン)が過剰に分泌されることによる
└ 左右対称性の脱毛
└ 乳房の腫大(雌性化)
└ 前立腺肥大や陰茎の萎縮
└ 重症例では汎血球減少症(赤血球・白血球・血小板がすべて減少)
ですが、精巣腫瘍の発見は動物病院での身体検査で「たまたま」発見されることがほとんどです。
転移は15%未満と聞くと多くはないように感じますが、7頭に1頭と聞くとどうでしょう?多く感じませんか?
治療法は外科手術による精巣の摘出です。
転移がある場合は転移病変に対して放射線治療が比較的よく効く一方、抗癌剤治療はあまり効果がないようです。
予後は転移がなければ良好です。ただし、数年後にリンパ節転移が認められることがあります。定期的な超音波検査での確認をお勧めしています。
最も有効な予防法は若い頃の去勢手術です。
若い頃は麻酔リスクも低く、マーキングやマウンティングなどの性行動の軽減や性欲を発散できないストレスを防ぐことができます。
また、精巣腫瘍以外にも前立腺疾患や会陰ヘルニアといった高齢になり麻酔リスクが上がってから発症する麻酔・手術が必要な病気も一緒に予防することができます。
もちろん生殖能力を失うことや手術後に太りやすくなること、健康体にメスを入れることなどのデメリットはありますが、高齢での麻酔はリスク(心臓病や腎臓病などの他の病気)を伴う可能性があります。

右が今回摘出した腫瘍化した精巣、左が萎縮した精巣です。4倍以上あります。
デリケートな部位ですが、去勢していない方は見たり触ったりして確認してみてください。
また1歳以上でまだ去勢手術をしていないワンちゃんは検討していただければと思います。