包皮形成不全?包皮低形成?珍しい症例をご紹介します
今回は少し珍しい手術を行いましたので、その症例をご紹介したいと思います。
ご相談いただいたのは、「陰部の先から膿が出ている」という主訴で来院された若いワンちゃんです。
これは「包皮炎」と呼ばれる状態で、若齢犬においてそれほど珍しいものではありません。
しかし、この子の場合は通常とは違い、包皮(おちんちんの皮膚)が正常に発達しておらず、非常に短い状態でした。その結果、腹部に小さな穴のような開口部があり、そこから常に亀頭(陰茎の先端)が露出しているという、かなり特殊な状態でした。
通常の治療との違い
包皮炎では、まず抗生剤での治療を行い、改善が見られない場合には去勢手術を検討するのが一般的です。去勢によってホルモンの影響が抑えられ、分泌物が減少し、多くの場合症状は改善します。
しかしこの子は、包皮が短いため常に陰茎が露出しており、細菌感染が起きやすい状態でした。また、排尿時に尿が胸部にかかってしまうという問題も抱えていました。
そこで今回は、去勢手術に加え、足りない包皮を再建する「包皮形成術」を行うことにしました。
手術の方法
こちらが術前の状態です。
赤線で皮膚を切開し、皮膚と皮下組織の癒着を丁寧に剥離したうえで、同じアルファベットが合わさるように縫合を行いました。
これにより、包皮のような構造を再建することができ、また前方向の牽引が解除されることで陰茎がやや下方に向くことになり、排尿時に尿が胸部にかかるのを防ぐ効果も期待しました。
術後の経過
こちらが術後10日目(抜糸時)の写真です。
術後の経過は良好で、見た目もかなり自然な形の陰部に近づいてきました。
また、飼い主さまからは「おしっこが胸にかからなくなった」と喜びの声をいただいています。
このように、見た目だけでなく生活の質(QOL)を改善することを目的とした外科手術も、症例によってはとても有効です。
少し珍しい症例ではありますが、同じようなお悩みを抱える方の参考になればと思い、ブログにまとめさせていただきました。